公益財団法人 相模原市産業振興財団

SOHOに期待するもの〜SOHOとは〜

荒木 幸生 2001.12.21

「SOHOとは」
コンピューターを道具として使い、サービスやシステムを提供・作成する自営業の人達。

【1】 これまでは就業が難しかった人達に就業と収入の可能性が出てきた事
 (1)家庭の事情により在宅での就業を希望する人達(収入規模1,000から2,000千円)
    お小遣い稼ぎ・家計の足し程度の収入でも良い人達
    ※例:在宅主婦、重度障害者(社会参画)、高齢者(生甲斐と老化防止)
 (2)家計収入を分担する人達(収入規模2,000〜4,000千円)
     何らかの事情により減収した家計を補う必要が出た人達
     例:退職させられた扶養者の配偶者、後天的障害者、再就職できない高齢者

【2】離職・転職後の家計を補う人達に就業と収入の可能性がある事
    (収入規模4,000〜6,000千円)
    ※例:解雇退職者、後天的障害者、特殊能力を持つ高齢者

【3】起業を志す人達に順風が吹いている事
 独立自営業者として、新商品・サービスを開発、経営手腕を発揮して会社を起こそうとする人達に、従来の零細・中小企業に無い社会的・政治的順風が後押し。

【4】成金願望者に社会が寛容になっている事
 伝統的に我が民族は成金願望者に対し、潜在的に妬みや冷たい目を向ける習性があったが、第三次ベンチャーブームとも言われる昨今では、その習性が潜伏する反面、期待感が(異常と思えるほど)蔓延している。

【5】経済生活基盤を補足・充足する事
 工業化社会のこれまでは、企業活動が社会を牽引してきたが、その危険性が欧州・米国・アジアを襲い、最後に我が国に到来している。欧州・米国では(一見)克服したが、我が国も景気の浮沈に影響を受けない、所得階層を新たに形成し、富裕ではないが貧困の心配がない、経済生活の裾野を広げる必要がある。それにはSOHOを始めとする、スモールビジネスが期待できる。

【6】肩書・収入よりも自分のライフスタイルを重視する市民層の拡充
 進学競争を勝ち抜き一流企業に就職し、「重い肩書をつけ、安定した高収入を得る事だけが人生ではない」と言うライフスタイルを理想とし、家族や地域や時間を重視する人達に、SOHOはうってつけである。そうした人生観を持つ市民層の拡充が期待できる。

【7】マルチハビテーションの実現と彼等を受入れる可能性の発生
 「ビジネスの場は都会、仕事をこなす事と生活は田舎」を理想とする人達には、格好のマルチハビテーションとなる。企業立地(誘致)に不利な条件のまちでも、彼等を受入れる事は可能性が有る。

【8】コミュニテイーの復活
 景気の浮沈に影響を受け易い、一流企業従業員が多く住む街よりも、(平均収入は下がるかもしれないが)SOHOで自活できる人達が多く住む街の方が、昼間人口が多く職住隣接であった、かつてのコミュニテイーが復活する可能性がある。

【9】サプライヤー企業のチャンス拡大
 SOHOが市民権を得て業態が確立すれば、SOHOに関与するメーカーやサービス業者にも、チャンスが訪れる。ただし売上や収益が急増するような事(満塁ホームラン)ではなく、事業(試合)を有利に展開しやすくする(バント・犠牲フライ・進塁打)チャンスが拡大するのだ。「風が吹けば(すぐに)俺が儲ける」事しか考えない昨今の彼等には、「待つ事はできない」だろうが、「ものを売る前に、ものが売れるような社会を作る事」が大切。売上・収益拡大を狙うのであれば、機能的にピンからキリまで要求にばらつきがある商品を、真にユーザーの為に開発する事、SOHOに仕事を与える事、自らが生活者の立場でテレワークを拡大する事を先行すべし。自社の売上拡大の広告費替りに、部門単位でチマチマとテレワークを試行程度しか実施していない企業は、多いに反省すべし。

【10】重要な蛇足
 企業城下町やニュータウンや工業団地の町のような、言わば強者の町は、一旦状況が悪化すると、一転して弱者の町になる。一方全国に溢れる(弱者の)過疎の町が目指すべきは、強者でもない弱者でもない、衣・食・住に困らない、文化と楽しみが有る、中庸な生活ができるまちではなかろうか?「SOHOはそうしたまちに相応しいし、SOHOがそうしたまちを作る」との期待に(やりかた次第では)応ええられる、と私は思っている。

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